ファームここからでは、子牛が生まれてから約10日間、母牛と子牛を親子セットで飼養しています。
今日は、なぜ最初の約10日間を「親付け」にしているのかをご紹介します。
一番大きな目的は、母牛から子牛への免疫の移行です。
生まれたばかりの子牛は、まだ免疫を十分に持っていません
人間の赤ちゃんも、生まれてすぐはまだ身体の機能が未熟です。
そして、母乳を飲むことで、お母さんからさまざまなものを受け取ります。
牛の子どもも同じです。
ただし、牛の場合は特に、生まれた直後に初乳を飲むことがとても重要です。
子牛は生まれた時点では、血液中に十分な抗体を持っておらず、初乳に含まれる免疫グロブリンを吸収することで、病気から身を守るための受動免疫を獲得します。
つまり、
お母さん牛の初乳は、子牛にとって「最初のワクチン」のような大切な役割を持っている
と考えると、イメージしやすいかもしれません。
そして、もう一つ大切なのが「リッキング」
親付けにしていると、母牛が子牛をペロペロとなめます。
これをリッキングといいます。
この行動には、子牛の身体を乾かしたり、立ち上がることを促したり、母子の絆を形成したりする役割があると考えられています。
そして、私たちが注目しているのが、微生物の移行です。
子牛の胃、とくに反芻動物として重要な「ルーメン(第一胃)」は、生まれたばかりではまだ十分に発達していません。
成長するにつれて、さまざまな微生物がルーメンに定着していきます。
その中には、ルーメン内で重要な働きをする原虫(プロトゾア)も含まれます。
原虫は、成牛から直接、あるいは成牛の唾液などで汚染された飼料を介して若い反芻動物へ移行することが知られています。母牛から子牛への微生物の移行も、こうしたルーメン環境の形成に関係しています。
つまり、母牛が子牛をなめるという、一見すると何気ない行動にも、子牛がこれから「牛らしく」成長していくための意味があるのです。
人間で考えると……
人間の赤ちゃんが、お母さんに抱かれたり、母乳を飲んだり、触れ合ったりしながら成長していくように、
牛の赤ちゃんも、
母牛の乳を飲み、
母牛になめてもらい、
母牛のそばで過ごす。
そんな時間の中で、少しずつ成長していきます。
もちろん、人間と牛では身体の仕組みが違います。
でも、生まれたばかりの命が、お母さんから必要なものを受け取りながら成長していくという点では、少し似ているところがあります。
ファームここからでは、生まれてすぐに人間がすべてを管理するのではなく、最初の約10日間は、できる限り母牛と子牛が一緒に過ごせる環境をつくっています。
その間、私たちはただ見守っているわけではありません。
母牛はしっかり子牛をなめているか。
子牛は初乳や母乳をしっかり飲んでいるか。
元気に動いているか。
排せつはできているか。
母子に異常はないか。
利用者さんと一緒に観察しながら、毎日の変化を確認していきます。
そして約10日間を過ぎたところで、次の段階へ進んでいきます。
生まれたばかりの約10日間は、子牛にとって、とても大切な時間です。
ファームここからでは、そんな「命が育っていく時間」そのものを、利用者さんの支援にもつなげています。
子牛の変化を見る。
母牛の様子を見る。
「今日は昨日と違うね」と気づく。
そして、その気づきを記録する。
牛を育てることと、人が成長すること。
その両方を大切にしながら、今日も牧場で仕事をしています。